結局2社目もお見送りという結果になってしまった。
1社目よりは面接に手応えを感じていただけにショック。
間をあけず、3社目に挑む。今回は人材派遣業だ。
そもそもなぜ転職をしようと思ったのか。パチンコ店員じゃだめなのか。そのあたりにも言及していく。
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初のWEB面接
9月も半ばに差し掛かる。外はよく晴れており、眩しい日差しが西向きの窓から部屋のなかに入ってくる。そんな昼過ぎ、僕は部屋の隅のデスクの前に椅子に腰掛けてその時を待っていた。
デスクの位置では、エアコンの風が身体に直接当たることに気づき風向きを変えてみる。リモコンの「風向」のボタンを数回押すと、少し遅れてルーバーが動き出す。エアコンの風は、なぜこんなにも気持ち悪いのだろうか。自然の風は心地いいのに。
駆動音も気になるので、風量も少し弱めた。気にしだすと小さなことばかりに捉われる。自分に当たる風に動じず、その風向きすら変えてしまうエアコンルーバーが羨ましい。
面接も3社目になるが、今回は初めてのWEB面接だ。コロナ禍以降、急速に広まったという話はよく耳にする。聞くところによれば、現在は面接の半分以上がWEB上で行われるらしい。これは10年前とは大きく変わったところだろう。
10年前にも転職活動をしたことがある。当時24、5歳でまだ若かったが、それなり苦労した辛かった。これについては別の記事を参考にしてほしい。当時と現在の違いを個人的な観点で書いたものだ。(内部リンク:パチンコ業界から2回転職!10年前との違いを教えます)
面接開始は14時から。相変わらず、よく晴れている。せっかくの休みなのだから、部屋の中に閉じこもっていないで、どこかへ出かけたい。でも宅建も取りたいから、勉強もしなくちゃいけないのだ。そうなると、結局一日中家で過ごすことになりそうか。
仕事でもないのに、家の中でスーツを着ていることに違和感も覚える。よくWEB面接のときは下はパジャマだなんて笑い話を聞くけれど、僕はそんな要領よくできない。服装に気持ちが左右されてしまうので、しっかり下まで着替えてフル装備のリクルーターだ。
このあたり、もっと気楽にできれば色んなことが苦労せずに済みそうなのに。そんなことを考えながら時間になるのを待っていると、ほどなくしてパソコンから通知音が聞こえた。
14時少し前だが、面接官から接続されたようだ。途端に緊張して、足先にぐっと力が入った。
作戦
今回は人材派遣の会社の面接だ。1、2社目とはまた違う業界だが、そういう方針なので仕方ない。エージェントさんと考えた作戦は「とにかく手当り次第」だからだ。
まずメインに狙っていく業界は不動産業界である。
- わずかだが賃貸仲介の経験がある
- 宅建取得を目指している
これらがその理由だ。
しかし、不動産業界だけ絞ってしまうと、転職そのものがままならない可能性があるという。なぜなら僕自身の市場価値が低いからだ。全くの異業種異業界への転職となるので、さもありなん。
なのでとにかく手当り次第応募するしかない。その中で引っかかったところに飛び込んで行くしかないのだ。そのうえで自分合うかどうかを精査していくのがいいんじゃないのかと。
後から気づくことだが、体力のいる作業になった。業界を広げると、調べるのにもいちいち時間がかかった。求められる人物像も変わってくるので、面接で用意する答えも都度調整する必要がある。その時点ではそこまで思い至らなかったので「まあ、そういうものか」くらいに思っていたけれど。
とにかくその作戦でスタートさせた。手当たり次第。これは作戦と言えるのか?大丈夫?
パチンコ店はなくても困らない
そもそもなぜ転職したいのか。理由は色々とあるが「人と深く関わることをしたい」ということが大きい。綺麗事のような歯の浮くような、信用ならないような理由だが、これが転職活動の主軸だ。
現在はパチンコ店で働いているが、パチンコ店では「人と深く関わるような仕事」は出来ない。もちろん本当に楽しんで店に来てくれるお客さんもいるし、そこに感謝してくれる人もちゃんといる。それでも「パチンコ店があって人生が大きく好転した!」という人はいないのが実情だ。
そこに責任がないのだ。パチンコ店があろうがなかろうが、人生に大きな影響を及ぼさない。誰かに深く関わることは責任が伴う。例えば医師は職務上、時に人の生死に関わる。その重圧に耐えられないという話も聞くし、それは理解できる。
そういう責任の重さはパチンコ店にはない。「人の金を奪っておいて何を言うんだ」という人もいるかもしれないが、それはその人の責任であって店側の責任ではない。金を使う決断をしたのは、使った側なのだから。結局、そこになくても困らない仕事。それがパチンコ店員だ。
その責任のなさが悪いわけではない。重圧がないことは気楽だし、それが向いている人も必ずいる。パチンコ店員が、間違っている仕事だとは絶対に言わない。でも僕自身は、そこに虚しさを抱えていた。
だから誰かを幸せにできるような、僕がいてよかったと言ってもらえるようなことがしたい。それが根底にある。
そういう意味では今回人材派遣業というのは良い業界だと思う。直接的に人に影響していけるからだ。上手く人と人を結びつければ、人生を変えるような経験をしてもらえるかもしれない。
そんな妄想が頭の中にあった。
WEB面接
面接官は40過ぎくらいの男性だった。知的な印象である。
まずは会社説明をかなり丁寧にされた。この点は好印象である。相互理解がコミュニケーションの第一歩というのが僕の持論だからだ。片方ばかりが話し続けるのは、どうしても違和感がある。
面接官の言うには、入社直後は毎日200〜300件架電し続けるらしい。それがとにかく大変だと。そのギャップが辛くて辞めていく人が多いんだそう。
いやそれで辞めていくなら、やり方を変えればいいんじゃないかと思ったけど。そうやってふるいにかけている意味もあるんだろう。その程度に耐えられなきゃ、結局辞めていくことになるから。それでやってきて成功しているんだから、会社側からすればあえて変える必要もないのか。
僕はとにかく受かりたい一心だ。その程度大したことないと思った。実際に、その仕事をやってきた人もいるわけだし。不動産仲介業をしているときには、一日中電話し続ける日もあった。
少なくとも面接時点でそのことを伝えるのはフェアだと思った。人材派遣の仕事が実際にどんなものかは分からないけれど。僕のイメージで言えば人と人をつなぐ仕事だろう。
営業について
営業経験について重点的に質問を受けた。前職は反響営業だったので、その点は伝えたがどうも反応が芳しくない。飛び込み営業とかそういう能動的なものを求められていることは明白だった。
僕にも飛び込み営業に似たような経験はある。パチンコ店で地域のお店に飛び込んで、広告を出して貰えないか打診するのだ。当然だがけんもほろろに断られる。よくわからないし、イメージが悪いとはっきり言われたこともある。
しかし、話を聞いてくれる人も大勢いた。結果的に広告を出してくれるお店もたくさんあった。その時の僕の成果は比較的良くて、10〜20店舗くらい獲得できた。他の人が10件にも満たなかったなかなので、個人的には満足のいく結果だった。
でもその経験は面接官には上手く伝わらなかったようだ。僕としてはそれなりに成功したと感じていただけにショックだった。
でも他人には伝わらないものを、どう伝えるのかが重要視されているんだ。伝わらないなら、それは僕の責任なんだろう。
面接を終えて
1時間程度で面接を終えた。回線を閉じる。
どうでもいいけど、WEB面接のときは回線を閉じるまでに意外と時間がかかる。ありがとうございましたのあとに変な間があって、その瞬間がどうにも気まずい。
そんなことを考えながらスーツから着替える。正直スーツは息苦しくて好きじゃない。
15時。まだ出かけられそうだが、宅建の勉強も進んでいない。歯を食いしばってテキストを開いた。試験まで残り1か月程度しかないのだ。こちらもないがしろにはできない。なぜならもう2年連続で落ちているんだから。
じゃあなんでこんな時期に転職活動をやっているんだ、僕は。
一人、窓際で
3時間ほどの勉強を終えたころ、外はすっかり日が傾いている。結局今日も一日中部屋のなかで過ごしてしまった。夜に出ていくのは好きではない。簡単に夕飯を済ませて早めに眠りたい。
適当に夕飯を済ませようと、支度をする。一人暮らしも長いので料理は苦ではないが、一人で食べるために敢えて手の込んだものも作らない。近年急激に美味しくなった冷凍食品で十全に事足りるし、白米だけあれば、惣菜程度で満足の行く食事ができる。
なのでとりあえず米を炊くことにした。無洗米なんて便利なものもある、米と水を量って炊飯器に入れるだけだ。六畳一間のキッチンに炊飯器を置くようなスペースはないので、床に置いて動かしている。
一人、部屋のなかで炊きあがるのを本でも読んで待つことにする。
ふいに外から大きな音がした。聞き慣れないドンというような響く音だった。大通りが近くにあるので、事故でもあったのだろうかと思い窓を開けた。
外はもう薄暗くて見通しが悪かったが、事故があった雰囲気はない。ヘッドライトとテールランプが遠くに見える信号まで続いて見えるだけだ。そこで、またドンと聞こえて気がついた、花火だ。ああ、そういえば今日は祭があって、夜には花火も上がるのだと職場の人が言っていた。
アパートの窓からこんなにもよく見えるとは知らなかった。これは適当に食事を済ましている場合じゃない!
窓際に椅子を運んで外を眺められるようにする。普段は手を付けない缶ビールがあったので、それを開けた。下戸なので一人では飲みきれないが。誰かが気分を盛り上げようと曲をかけたのだろう。どこかから『長く短い祭』がかかっているのが聞こえる。良い選曲だ。
一人、部屋の中から花火を眺めている状況を話せば、随分寂しい人間だと笑われるかもしれない。でもこうして、多くの人達が同じものを見ている、この状況は一人じゃないと思わせてくれるようで、今の僕の慰めにはなってくれている気がした。
おわりに
選考結果はなかなか届かなかった。まあ落ちたんだろうと予想した。結果はエージェントさんに届けられるので、それを知らせてくれないと分からない。エージェントさんが、タイミングを測ってくれていたのだろう。
あまり良くない部分もあったが、それなりに手応えはあった。2社目の自動車部品メーカーほどではなかったけれど。それなりに話もできたし、言いたいことは言えたと感じていた。
それなりに間を開けてから、エージェントさんが結果を教えてくれた。予想どおり「お見送り」だと言う。その理由は他者比較だと。
スキル経験と照らし合わせて、条件が変わらないなら若い人が選ばれるものだと伝えられた。若い人を優先する文化は根深いが、疑問が残るところではある。
4社目へ続く…
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